3月の星空



春霞の中 冬の星座を見送る




こちらの写真は下の写真の51分後に撮影した1枚。右側に写っているふたご座から分かるように、さらに天頂方向にレンズを向けている
春の代表的な星座、しし座。写野のほぼ中央にはしし座のししの大鎌がある

しし座の1等星はレグルス。全天21の1等星の中では最も暗い
この写真ではレグルスの右上にあるのが2等星のアルギエバ。写真をよく見ると、オレンジ色の主星と黄色の伴星からなる二重星であることが分かる。春の大三角の1つ、2等星のデネボラも見える
ししの大鎌とふたご座の間にはかに座のプレセペ星団。写真では4つの星に囲まれた散開星団であることがよく分かる

春の星空は寂しいとよく言われる。それは春の星座には天の川がないからだが、天の川がないことから天の川に遮られて隠れている遠くの銀河がよく見えるということでもある

春の星空は「宇宙の窓」

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20mm、ISO800、f2.0、15秒、マニュアルWB、サイトロン スターエンハンサー、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 20mm F1.8 G

2025年03月23日00時51分






0時を過ぎるとこの時期としては棲んだ星空が広がった。春霞の中で撮ってどうするのだ、と思う人もいるだろう
いつでも星さえ出ていれば撮れるのではないか、というのも一理ありはする
しかし、ちがう

少しずつ火星が暗くなっている
もちろん見かけの話である
上の写真の火星の明るさは0.2等

火星の位置にも注目したい。ふたご座の中にあった火星が、今やそこから外に出ようとしている。このページの 3月1日の星空 と比べてみてほしい
全く同じ星空というのはあり得ないのだ

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20mm、ISO800、f2.0、20秒、マニュアルWB、サイトロン スターエンハンサー、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 20mm F1.8 G

2025年03月23日00時00分






春霞の中 冬の星座を見送る

薄明の終了から月の出までの2時間あまり
この気象状況が続けば、冬の星座の見送りが撮れるかもしれない、と期待して準備を進める
春霞はいかんともしがたいが、その割には透明度は悪くない

中央右にふたご座のカストルとポルックス。やや赤味を帯びているのがポルックス、青白いのがカストル。ふたご座の中には火星が侵入して賑やかだ
ふたご座の左にはこいぬ座の1等星プロキオンが輝いている。プロキオンの左下の山際にはおおいぬ座の1等星シリウス。ふたご座の下、山稜のシルエットの中にはオリオン座のベテルギウスが赤く輝いている。右端の施設の照明で赤く淀んだ空気の中には木星。照明のせいで赤く見える。木星の右上にはぎょしゃ座。1等星のカペラが目を引く

ふたご座の左上にはかに座。蟹の甲羅の中にはM44プレセペ星団がひしめいている。かに座の宝石箱に例えられる、美しい散開星団。1609年に自作の望遠鏡で散開星団であることを発見したのがガリレオ・ガリレイ

春の星座が東天から天頂にかけて登場し始めると、冬の星座が西へ退いていく。星は巡り、季節も巡る

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14mm、ISO200、f2.0、60秒、マニュアルWB、LEE SP-31 ソフト №1、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、赤道儀で恒星追尾撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 14mm F1.8 GM

2025年03月20日23時35分






東方最大離角翌日の 水星、そして 金星 を 撮る




東方最大離角翌日の 水星(Mercury)、そして 金星(Venus)を撮る

最も内側を公転する惑星の水星は、太陽の近くを公転する内惑星である。そのため観察しやすいのは、明け方は西方最大離角の頃、夕方は東方最大離角の前後に限られる。2025年の明け方に水星が見える西方最大離角は4月22日、8月19日、12月8日の3回。夕方に水星が見える東方最大離角は3月8日、7月4日、10月30日の3回。水星の高度は黄道の傾きも関係するので、3月上旬が夕方の観察には向いているとされる

今回の東方最大離角は3月8日。残念ながら雲に阻まれて観察できなかったが、翌3月9日は快晴に恵まれた。しかも金星との接近も見られるという幸運となった
撮影時点の水星の高度は6.478°光度は-0.1等だった。昼間の明るさが消え始め、夜に向かうと水星は肉眼でも容易に識別できた。もう少し南風が強ければ、工場排煙が北へ流されるのでもっと見やすかっただろう
水星の右上には金星がひときわ明るく輝いた。このときの金星の高度は10.119°、光度は-4.4等だった

金星の高度は2月上旬には40°を超えていたが、今や急速に高度を下げている。3月21日の内合が過ぎると明けの明星へと変わる。夕方見える宵の明星を太白星、明けの明星が明星と呼ばれていたことは前に触れた

現在日本と欧州共同の水星探査ミッションが進行している。ベピ・コロンボと呼ばれるミッションで、アリアン5ロケットが2018年10月に打ち上げられ、2026年11月に水星周回軌道に投入される計画となっている。ベピ・コロンボにはJAXAの探査機MMO(みお)が搭載されている。水星は太陽に近い軌道を公転しているため、極めて大きな太陽の重力の影響を受けることになり、困難なミッションとされている

水星周回軌道への投入まで、あと1年と8か月


 【以下、余談】


今回の水星のように西天で低い高度の天体を撮る場合は、やはり金生山は適している。もっともここも街灯が増えて、上方光束が夜空を観望する妨げにはなるので天頂の天体を観察するには不向きだ。もっとも市街地の街明かり強烈で、それ以前の問題ではある

今回ここで撮ろうと快晴の西天を見ていると、愛知県三河地方から来られたという2人と出会った。ヒメボタルや観察会の話をしながら、名前を聞くこともしなかったが、1人は高校時代に天文部だったということだった。未だに水星を自分の目で見たことがないとうかがった

もう少しで水星が肉眼で見えるようになりますよと、つい口から出そうになったが、遠方まで帰宅されることを考えると無理な誘いと思いとどまった。星空を写真で撮るということはしていない、ということだったが、何がきっかけになるかわからない。ぜひ挑戦されるといいなぁと、撮影を終えて揖斐の山奥まで戻る車中で思いを巡らせた

星のある世界は、自分のイメージの広さと深さ以上に無限に広がっている

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85mm、ISO400、f1.4、1秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7RM5 + FE 85mm F1.4 GM Ⅱ

2025年03月09日18時50分






すばる(M45、プレアデス星団)食 を 撮る




2025年3月5日22時ころから月が すばる(M45、プレアデス星団)を通過する すばる(M45、プレアデス星団)食 が見られた。月による すばるの掩蔽 は月没まで見られるはずだったが、押し寄せる雲と降り出した霙に邪魔されて最後まで観察することはできなかった

2025年は すばる食Year とも言える。今回に続いて、8月16日の23時頃から翌17日01時30分ころまで北東~東の空で2回目の すばる食 が見られる。掩蔽の開始時の高度は10°と低いが、終了時には35°ほどに昇る。その次は11月6日23時30分ころから、翌7日の午前02時まで南東から西南西の空で見られる。高度は60~70°とたいへん高い。すばる食Yearの最後は12月31日22時ころで、南西の空70°ほどと大変高い。食の終了は年をまたいだ1月1日0時30分ころ。除夜の鐘を聞きながらの観察となるはずだ

今回は上弦の2日手前、月齢5.5だったが、それでも月の存在感は強烈で すばる との輝度差は激しかった。次の8月16日は月齢22.8、11月6日の月齢は16.1、最後の12月31日の月齢は11.5である

「泣く子と地頭には勝てぬ」というが、「泣く子と湧く雲(そして降る雨)には勝てぬ」といったところか

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400mm、ISO100、f8、1/4秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはoff、三脚で固定撮影、美濃平野部
SONY α7RM5 + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS

2025年03月05日22時16分






月 と 水星 の大接近を撮る




(Moon) と 水星(Mercury) の 大接近を撮る


天候が思わしくなくて心配したものの、SCW気象予報によると18時30分頃には西から晴れ間が広がってくることになっている
予報を信じて金生山化石館近くに三脚を立てて、撮影途中で暗くなってもいいようにヘッドランプも準備した

日没後の空を照らしていた残照は徐々に消え、気がつくと雲間から金星(太白星)が明るく輝き始めた
この時刻の金星の光度は-4.6等、高度は18.577°
金星を目印にしてその下の雲間を探すと、月齢1.4という大変細い月が見え始めた。地球照が大変美しい
高度は5.685°だったが、細い月ながら存在感は抜群で、すぐに見つけられた
さて、月の下の雲の間からは明るい点のような水星が輝き始めた。光度-1.0等、高度は3.844°と大変低かったが、マイナス等級の水星を見失うことはなかった

工場夜景もアクセントと考えれば十分満足のいく観察場所ではないか
ただし風向きによっては、肝心な天体が工場からの排煙によって隠される恐れはある

美しい地球照を伴った月、水星、ひときわ明るい金星と撮影できたことに感謝する他はない
この晩の、水星と月の大接近はメディアにずいぶん取り上げられた天文現象だったが、今晩もまた誰とも出会うことはなかった

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85mm、ISO400、f1.4、1秒、マニュアルWB、Raw
高感度NRはoff、長秒時NRはon、三脚で固定撮影、金生山
SONY α7RM5 + FE 85mm F1.4 GM Ⅱ

2025年03月01日18時44分